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学部・大学院

下部消化管外科学

現在の研究テーマ

排便機能障害に対する仙骨神経刺激療法の作用機序の解明

 現在本邦では約500万人の便失禁患者がいると推測されています。2017年に「慢性便秘症の診療ガイドライン」が発刊され仙骨神経刺激療法が重要な治療法として記載されました。この治療法の特徴は症状が改善するかどうかを一時的な刺激装置で約2週間刺激し、治療開始前に試すことができる点にあります。効果が認められたときのみ永久的な刺激装置を腰背部の皮下に植え込みます。実際には刺激用のリードが仙骨孔からS3の近傍に植え込まれます。手術の効果については約70%以上の患者さんに症状の改善がみられ、欧米では約40%に症状の完全消失が認められています。本邦においては2014年にこの治療法が保険収載されるまでに本学を含めた5施設において治験が行われ、欧米と同様の効果を認めています。しかし、治療効果の明らかなエビデンスがあるにもかかわらず、その作用機序については殆ど解明されていません。今後私たちは肛門内圧の上昇、直腸肛門感覚の改善、大腸の蠕動への影響などを仮説として研究を進めていく予定です。

局所進行直腸癌に対する周術期化学療法の有効性および安全性の検討

 総合医療センター大腸グループが大腸癌治療のなかでも特にこだわりを持っているのが、下部進行直腸癌に対する集学的治療です。下部直腸癌は他部位の大腸癌に比べ、局所再発、全身遠隔転移(特に肺転移)再発が多いのが特徴ですので、診断がつき次第、術前化学療法を導入することにより、直腸原発巣のみならず微細な遠隔転移制御が早期に達成され、長期治療成績(予後)の向上がもたらされると考えています。治療スケジュールは、術前に3か月全身化学療法を施行し、その後腹腔鏡下直腸手術(全直腸間膜切除および両側側方リンパ節郭清術)を施行。そして術後再度3か月化学療法を行います。現在、術前化学療法の安全性や有効性を証明するため、臨床研究を企画し、遂行中です(総合医療センター自主研究:局所進行大腸癌に対する周術期化学療法に関する有効性および安全性の検討~第II相臨床試験~UMIN000024323))。

切除不能進行肝細胞癌、切除不能胆道癌に対する取り組み

 切除不能肝細胞癌に対しては、分子標的薬を積極的に導入し、肝動注化学療法との併用療法の安全性と有効性を報告している(臨床試験)。2020年からは免疫チェックポイント阻害薬と分子標的薬の併用療法を開始しており、多くの切除不能肝細胞癌を有する患者さんで腫瘍の縮小と長期生存の実現が可能となりつつあります。さらなる治療効果の改善を目指し、多くの多施設共同臨床研究に参加しています。
 切除不能胆道癌(肝門部胆管癌、肝内胆管癌、胆嚢癌)に対しては、GCS療法を中心とした化学療法を実施しており、現在、約3割の患者さんで腫瘍が縮小し、根治切除(コンバージョン手術)が可能となっています。我々は、薬物療法と外科手術を組み合わせた集学治療による予後改善を目指しており、治療効果の向上を目指した多くの臨床研究を実施しています。

直腸腫瘍に対する腹腔鏡下低位前方切除術後の経肛門ドレーン留置と水溶性造影剤注腸検査による縫合不全の予防及び治療に関する前向き第I相試験

 本研究により直腸低位前方切除術が一時的人工肛門(DS)無く安全に管理可能となり、縫合不全検出画像診断法が確立されました。最終的にDSを要する症例は23.9%→7.0%まで減少し閉鎖率は100%です。現在は一般診療として様々な応用をしています。Int J Colorectal Dis. 2020 Nov;35(11):2055-2064.

中下部直腸癌摘出標本を用いた、MRI画像診断と病理所見の比較試験(CAMPaS RC Trial)

 本研究は大腸癌研究会project研究として発展しました。直腸癌の術前MRI診断精度を改善させ、術前化学放射線療法による治療後の効果判定の精度を改善させ、括約筋温存術の可能性を広げ、手術不要の症例 をwatch and waitとして判定する基礎研究になると期待されています。根治目的で術前化学放射線療法後に進行中下部直腸癌に対して切除を施行した46例では、観察期間中央値1345日 (129-2656). 再発7例 (肝/肺/尿管/皮膚;4/5/1/1). 骨盤内再発なし. 5年全生存率 84.7%. 5年 無再発生存率 80.5% (pStageIII以下の症例では83.3%)です。

腹会陰式直腸切断術、周辺臓器合併切除を要する術式研究

 根治と機能温存を両立させるため、trans anal TMEや、伏臥位会陰アプローチなどを柔軟に組み合わせた応用術式を報告しています。(臨床外科75巻5号 552-560,2020. Colorectal Dis. 2021 Jun;23(6):1579-1583)

蛍光尿管catheter(NIRC)を用いたimage navigation surgery

 尿道に近接する進行直腸癌根治術、再発骨盤内腫瘍に対する安全な機能温存術と拡大手術の可能性について検討し報告しています。(Dis Colon Rectum. 2021 in press, Dis Colon Rectum. 2021 Mar 1;64(3): e54.)

肥満・糖尿病に対する減量・代謝改善手術の開発

 食生活の欧米化や社会的ストレスの増加に伴い日本でも肥満割合は増加傾向にあります。そして、肥満による糖尿病も増加傾向です。日本ではあまり知られていませんが、肥満や糖尿病に対する手術があります。腹腔鏡下スリーブ状胃切除やスリーブバイパス術などの減量・代謝改善手術です。関西医科大学附属病院は日本肥満症治療学会の肥満症外科手術認定施設になっており、安全かつ効果的な減量・代謝改善手術を実施するとともに、多施設共同研究でより有効な減量・代謝改善手術を開発するための研究を行っています。

手術シミュレーション方法の開発

 関西医科大学には医科大学でもトップクラスの345㎡という広い空間に、100種類以上の機器を保有するシミュレーションセンターがあります。腹腔鏡手術などの高度な技術を必要とする手術のトレーニングを行うとともに、より効果的なシミュレーション・トレーニング方法の開発も行っています。また、医学生に実際に近い手術手技を体験してもらうことで、スーパードクターと呼ばれるような外科医を目指す医学生が増えることも期待しています。

連絡先

〒573-1010 枚方市新町2丁目5番1号
関西医科大学 医学部 下部消化管外科学講座

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医学部 下部消化管外科学講座
大学院医学研究科 医科学専攻 下部消化管外科学

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