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学部・大学院

救急医学

関西医科大学の救命救急センターは大変歴史が古く、1979年現在の総合医療センター内に大阪で3番目の救命救急センターとして認可されました。その後1993年、西日本初の高度救命救急センターに認可されました。2006年附属枚方病院(現:関西医科大学附属病院)開院後は、附属病院、総合医療センターそれぞれに救命救急センターが設置されています。

一方で救急医学講座は、2012年4月に発足した学内でも比較的新しい講座です。救命救急センターの設置以降、外傷、熱傷、中毒等の研究を続けてきましたが、現在ではさらに幅を拡げ、集中治療におけるAIモデル開発と活用、集中治療における超急性期の栄養剤の開発と臨床的効果の検討、重度免疫不全患者のCOVID-19に対する治療法開発及び薬剤耐性遺伝子変異の同定、Hybrid ERシステムを用いた臨床成績の評価及び周辺機器の開発、LC/MSを用いた中毒診療、院外心肺停止患者のレジストリー研究、熱中症の病態解明など幅広い臨床研究を行っています。また大学院研究室では、敗血症、熱中症、腸管虚血再灌流障害を対象にモデル動物を用いた基礎研究も行っています。

現在の研究テーマ

Hybrid ER関連のこれまでと今後

Hybrid ER system(以下、HERS)はAngio-CTを初療室に設置したシステムであり、患者搬入後に患者移動をすることなくCTを撮像し、止血術やカテーテル治療などのIVRを行うことが可能です。
2011年にHERSが大阪急性期総合医療センターに当時在任していた当教室主任教授の主導の下で世界で初めて導入されて以降、当教室を含む40近くの医療機関で稼働しています。重症外傷領域をはじめとする予後改善のエビデンスや報告がされてきていますが、当教室からも、症例報告や治療成績、レビューなど、学会発表、学術論文を発信してきました。また、2017年には世界で初めて当教室に2 room型HERSを導入し、低稼働率の問題は解消すべく隣接する2つの部屋をCTガントリーが行き来して検査を行うことを可能としたものであることを論文で報告しました。

一方、HERSの進化についても当教室が主導する一役を担っています。HERSの特性上、CT画像診断装置や刻々と変わる生体モニターから提供される膨大な情報をリアルタイムに全て把握することは困難ですが、これらの課題を補完するためにICTヘルスケアとコラボレーションし、大型モニター表示や自動音声読み上げを特徴とするAbierto Cockpit for ERを開発し導入しました。
これらを用いた臨床的有用性についても学会発表、論文報告をしています。今後も、国内だけでなく海外へ展開してゆくHERSですが、当教室はその主導的役目を果たしてまいります。

ビッグデータとAIで挑む救急・集中治療の新しい臨床研究

救急外来や集中治療室(ICU)では、患者さんの状態は刻々と変化しており、こうした変化に対する初期対応の遅れは、患者さんの転帰に悪影響を及ぼすことが明らかになっています。しかし、急変を事前に高い精度で予測できる明確な指標は十分に確立されておらず、実際の現場では医療者の経験や知識に基づく判断に依存しているのが現状です。そのため、急変を早期に察知し、適切な介入につなげる質の高い予測モデルの構築は、急性期医療における重要な課題です。

当教室では、この課題に取り組むため、多施設ICUデータベースであるOneICUを活用した臨床研究を進めています。OneICUは、関西医科大学を中心とする国内多施設の集中治療室において蓄積された医療データを統合した大規模データベースです。バイタルサイン、血液検査、投薬、処置、診断、転帰といった多様な医療情報を分単位で記録しており、日本の実臨床を反映した救急・集中治療研究の基盤として、大きな可能性を有しています。
本研究では、患者背景情報や生体情報を用いて急変イベントの発生を予測するモデルを構築し、その性能を単独の生体情報による予測能と比較することで、より高い精度で急変を予測できるかを明らかにすることを目的としています。これにより、急変リスクの高い患者さんを早期に同定し、より迅速かつ適切な対応につなげることが期待されます。

さらに、ICUでは多くの患者さんの治療や処置が同時進行で行われるため、限られた医療資源の中で効率的な診療体制を構築することも重要です。たとえば、状態の安定した患者さんを適切なタイミングでICUから退室させることは、重症患者に集中治療を提供するうえで極めて重要です。OneICUを基盤としたAIの活用は、こうした課題に対して新たな可能性をもたらします。バイタルサイン、血液検査、投薬・処置記録などの医療情報をもとに予測スコアを算出することで、臨床現場における意思決定を支援するツールとしての応用が期待されます。

今後は、このような大規模かつ高精度な臨床データとAI技術を組み合わせることで、急変予測のみならず、予後予測や治療介入の最適化、ICU退室判断支援などへと応用を広げ、救急・集中治療領域における診療の質向上を目指していきます。

オートファジー維持を志向した経腸栄養療法に関する研究

当科では、重症患者に対する栄養療法の最適化を重要な研究課題として位置づけ、研究を進めています。
近年、重症患者の急性期においては、過剰な栄養投与や高血糖、低リン血症が予後に影響する可能性が示されており、栄養組成そのものを見直す必要性が高まっています。オートファジーは、細胞内の不要な蛋白質や傷害を受けた細胞内小器官を分解・再利用する生体内の恒常性維持機構であり、侵襲下の生体反応や代謝調節にも深く関与しています。また、糖質やロイシンはmTOR活性化などを介してオートファジーを抑制する可能性が指摘されています。こうした背景のもと、当科では、糖質およびロイシン含量を抑え、脂質比率を高めることでオートファジー維持を志向した新たな経腸栄養療法に着目し、その有用性を検討してきました。

当科からは、重症患者に対する新規経腸栄養剤の有用性に関する研究成果を公表しています。本研究は、大塚製薬工場との産学連携のもとで進めてきた取り組みです。今後は、前向き研究や基礎研究へと発展させ、さらなるエビデンスの創出を通じて、重症患者における最適な栄養戦略の確立を目指しています。その一環として、フローサイトメトリーを用いて免疫細胞レベルでオートファジー関連変化を評価し、栄養組成の違いが生体応答に及ぼす影響をより詳細に解析することを検討しています。臨床アウトカムの評価にとどまらず、その作用機序まで含めて明らかにすることで、重症患者に対する個別化栄養療法の発展につなげたいと考えています。

免疫不全患者におけるCOVID-19に関する臨床研究

当科では、COVID-19流行初期から現在に至るまで積極的に診療に携わり、各フェーズに応じた臨床研究を展開してきました。流行初期には、人工呼吸管理を要する重症COVID-19患者の診療と治療成績の向上が重要な課題でした。一方、現在では、悪性リンパ腫患者や臓器移植後患者などの免疫不全宿主におけるSARS-CoV-2持続感染が重要な臨床課題となっています。

当科では、免疫不全患者を対象として、SARS-CoV-2持続感染のリスク因子を明らかにするとともに、多剤併用療法の有用性について報告してきました。また、持続感染患者から採取したウイルスのゲノム解析を行い、薬剤耐性に関連する遺伝子変異が高頻度に認められることを見いだしました。このように、ウイルス学的評価に基づいて治療戦略を構築している点は、国内外でも限られた取り組みです。さらに、免疫不全患者に抗ウイルス薬を投与した際に出現する特異的な薬剤耐性遺伝子変異について、その発生リスクや頻度を評価した報告も行っています。これらの研究は、国内の他大学病院と連携した多施設共同研究として進めてきました。
加えて、持続感染リスクの高い免疫不全患者に対しては、フローサイトメトリーを用いてT細胞、B細胞、NK細胞などの免疫細胞動態を評価し、持続感染のリスク層別化や病態解明に取り組んでいます。これらの研究を通じて、免疫不全患者におけるCOVID-19診療の最適化と新たな治療戦略の確立を目指しています。

熱中症に関する共同研究(環境研究総合推進費)

気候変動適応の社会実装に向けた総合的研究 (S-24)
テーマ5:気候変動に伴う健康影響に関するデータ収集・データドリブンな解析
サブテーマ3:領域横断的・学際的熱中症環境リスク評価

【概要】
気候変動に伴う健康被害は大きな問題です。本邦の熱中症患者の救急搬送件数・死亡者数は増加の一途を辿っており、根本的な熱中症対策が求められています。

本研究は屋外作業やスポーツ現場になど社会活動に伴って生じる熱中症についてフォーカスし、救急集中治療医学だけでなく予防医学、スポーツ・労働科学、環境疫学など領域横断的・学際的なアプローチで熱中症のリスク評価・適応方策を講じることを目的としています。
具体的には、サブテーマ5(1)で開発中の熱中症アプリとの連携によるリアル・ワールド・データの解析、モデル地域を設定した実証実験、レジストリデータを用いた解析などを行う予定です。

敗血症・熱中症・腸管虚血再灌流障害における心・循環動態機能変化および酸素代謝異常の発生機序の解明とその制御に関する研究

当研究室では、救急・集中治療領域において重要視される敗血症、熱中症、および腸管虚血再灌流障害を対象に、モデル動物を用いた基礎研究を行っています 。本研究の目的は、これらの病態における心・循環動態の機能変化や酸素代謝異常の発生機序を解明し、その制御法を確立することにあります 。

敗血症分野の研究では、ウサギのエンドトキシンショックモデルを用いて、末梢血管抵抗が減弱する特有の循環動態を再現し、循環制御を可能にする薬剤の探索・開発を推進しています 。近年ではチアゾリン類恐怖臭物質に着目しており、重篤な血管麻痺(vasoparalysis)状態に対して、臓器および組織の血行動態を改善させる効果が期待できることを確認しました 。
また、同様のモデル作成技術を応用してウサギ熱中症モデルを構築し、下大静脈(IVC)、上腸間膜静脈(SMV)、および腸管粘膜における血行動態の変化を詳細に観察しています 。こちらにおいても、チアゾリン類恐怖臭物質による治療効果の検討を行っています。

熱中症に関しては、ラットやマウスを用いたモデル研究も並行して実施しています。全身麻酔下で人工的に作り出した過高熱ラットにおいて、各種サイトカインの測定を通じて熱中症の発症を確認するとともに、生存率向上の鍵となる因子の特定とその治療法の開発に取り組んでいます。
さらに、臨床現場で遭遇することの多い虚血再灌流障害についても、マウスモデルを用いて病態の再現と解析を行っています。特にマウスのモデルは全身性の炎症を引き起こす点が特徴であり、薬剤投与による病態変化の解析を通じて、新たな治療法の開発に努めています。

連絡先

〒573-1010 枚方市新町二丁目5番1号
関西医科大学 救急医学講座
電話 教授室 072-804-2483

関連

医学部 救急医学講座
大学院 医学専攻 救急・災害医学

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