内科学第二
内科学第二講座は1940年に内科学第一講座より分離独立し、現在は循環器・腎・内分泌・代謝疾患を対象としています。即ち、メタボリック症候群から急性冠症候群、慢性腎臓病、高血圧、重症糖尿病まで、現代病全てを包括する講座です。
循環器病部門では1978年にいち早くCCUを開設し、現在では附属滝井病院・枚方病院で心臓集中治療センターを運営し、年間1500例を越える心臓救急患者の治療を行っています。心臓カテーテル検査、経皮的冠動脈形成術のみならず、重症不整脈に対するカテーテルアブレーション治療や重症心不全患者に対する両心室ペーシング治療も行っています。画像診断も年間4000例を超える心臓超音波検査、年間1000例以上のRI検査、多列化CTを用いた冠動脈CT検査やMRI検査により、疾患の早期発見・適確な治療方針の決定を行い、地域の中核病院としての重責を果たしています。
内分泌・代謝部門では1000人を越える糖尿病患者の診療をはじめ、I-131を用いたバセドウ病に対するアイソトープ治療も行っています。
腎・高血圧部門では、近年増加の一途をたどっている慢性腎臓病患者に対する腎保護対策とともに、急性腎障害、慢性腎障害に対する腎生検を行い、エビデンスに基づく医療を行っています。
内科学第二講座は循環器・腎臓・内分泌代謝の3部門を担当する「生活習慣病内科」です
内科学第二講座は循環器・腎臓・内分泌代謝の3つの領域の疾患を担当しています。循環器領域では虚血性心疾患・不整脈・心不全が、腎臓領域では慢性腎炎・ネフローゼ症候群・慢性腎臓病(CKD)・急性腎不全が、内分泌代謝領域では甲状腺・下垂体・視床下部・副腎などの様々な疾患および糖尿病が、それぞれ主な対象疾患です。「心腎連関」などの言葉からも明らかなように、これら領域の疾患は相互に密接な関連を持っています。また、これらの疾患の多くは「生活習慣病」としてとらえることができると同時に、加齢にともなってその発症頻度が増加するいわゆる「老化関連疾患」としての側面も有しており、今後高齢化社会が進むにつれその重要性はさらに増していくものと思われます。基礎研究と臨床研究の両面からこれらの疾患の本態を解明し、新たな治療法の開発につなげていくことを目指しています。
現在の研究テーマ:循環器
ヒト心臓組織幹細胞による心筋再生
ヒト循環血中には心筋細胞、平滑筋細胞、内皮細胞の3種類の細胞に分化しうる前駆細胞が存在することをこれまで明らかにしてきました。この細胞の起源を明らかにするとともに、ヒト心臓組織幹細胞の簡便な単離法を開発することにより、心筋再生へ応用することを試みています。
心臓インスリンシグナルによる心機能調節
糖尿病を有する患者さんはそうでない患者さんに比べて心不全の発症率が高く、心筋細胞におけるインスリン抵抗性がその基盤病態のひとつと考えられています。実際に心筋細胞だけにインスリン抵抗性が存在するようなマウスモデルを作成したところ、心機能が低下していくこと見出しました。このマウスの解析を通して、糖尿病における心筋障害の病態を明らかにすることを試みています。
循環器疾患患者の予後予測因子の解明
心エコー指標をもとに、循環器疾患患者さんの予後を規定する因子を明らかにすることを試みています。具体的には年齢依存性心疾患の代表である心房細動と大動脈弁狭窄症の患者さんを対象に、様々な心エコー指標の予後予測因子としての有用性について検討しています。
現在の研究テーマ:腎臓
次世代シークエンサを用いた疾患原因遺伝子探索
単一遺伝子異常で発症する遺伝性腎疾患の原因遺伝子検索をおこなっています。慢性腎臓病(CKD)は多因子が関与する疾患ですが、遺伝性腎疾患の病態解明を通じて、慢性腎臓病の新しい治療法を確立することを目指します。
遺伝子改変マウスを用いた腎臓病治療薬開発
mTORシグナルを組織特異的に活性化することにより腎疾患を発症する遺伝子改変マウスを作成し、その病理形態、シグナル伝達情報を基に、根本的治療につながる創薬標的分子の探索を行っています。
腎障害進展予防のための運動療法
保存期慢性腎臓病、あるいは腎移植後患者の腎機能保持のために役立つ、運動プログラム、モニター機器、筋・脂肪組織の代謝マーカーの開発を行っています。
現在の研究テーマ:内分泌代謝
食後高血糖が骨髄機能に及ぼす影響
糖尿病に伴う大血管疾患の発症には食後の高血糖の関与が重要であることが明らかになっています。ヒトにおける負荷試験を用いた検討で、食後高血糖と血中の血管内皮前駆細胞数には負の相関があることを見出しました。食後高血糖が骨髄の血管内皮前駆細胞におよぼす影響を検討し、糖尿病に由来する大血管疾患の発症機序の解明を試みています。
心筋細胞分化における甲状腺ホルモン活性化酵素の役割
iPS細胞から心筋細胞を分化誘導する過程における甲状腺ホルモン活性化酵素の役割を検討しています。ヒトiPS細胞から心筋細胞への分化誘導過程において甲状腺ホルモン活性化酵素の発現が亢進していることを見出しており、甲状腺ホルモン活性化酵素が分化した心筋細胞の成熟化に影響することが予想されます。分化誘導した心筋細胞の成熟化のメカニズムが明らかになれば、ヒトiPS細胞を用いた心筋再生治療の臨床応用に貢献できるものと期待されます。
研究業績