数学
医学分野における数学の活用を目指して
医学の世界における数学の役割とは、具体的な現象を抽象的にモデル化し、論理性に基づく数理的な解析を行い、得られた結果をまた現実の世界にフィードバックすることで、現象解明や改善の方向性を与える等の効果をあげることです。医学的な研究対象は千差万別なので、どのような対象についても数学的な手法を応用して研究を行うためには、実際に得られたデータや生体信号を、物理的・数学的に意味のある数理モデルで表現し、その原理を追求することが重要になります。こうした数理解析に使われる数理モデルは、研究対象に応じて多岐に亘っており、また近年多様化する医学統計学についてもさまざまな手法が存在します。
そこで、こうした数学の医学分野での活用を念頭に、数学教室では基礎的な検討から臨床応用まで幅広く対応可能な、数学をツールとして利用できる能力の向上を目指し、こうした能力や研究手法を大学全体にフィードバックしていきたいと考えています。また、近年臨床研究における医学統計学の重要性が増していることから、医学統計学の知識を応用した研究支援活動も展開していきます。
現在の研究テーマ
医学分野における数学の活用を目指し、生体現象を数理的にモデル化して実際の生体現象の解明につなげる、いわゆる数理モデリングの手法を軸とした研究を行っています。さらに、医学統計家の視点から臨床研究支援センターに協力し、統計学の知識を応用して研究計画立案や医学統計学に関するアドバイスを行うことで、臨床研究をサポートする活動も行っています。
教室としての主な研究テーマは次の3つです。
(1)生体現象の数理モデリング
生体内のさまざまな物理現象(例:血中酵素反応や筋収縮現象など)に対し、その基礎現象となる生理特性に着目して構築した数理モデルを用いて、生体現象を解明しています。特に、生体流体工学を応用した全身循環器系の数値計算モデルは、生体から得られた血圧脈波波形の計測データをシミュレーション計算に用いることで、生体内の循環器系動態を解析することができます。
(2) 医学統計学
統計学的解析手法を医学統計・医療情報へ応用する研究を行っています。具体的には、医学研究を進める際に、現実のデータからどのような統計手法を選択したら良いのかを支援することができる「臨床研究統計手法の逆引き探索と自己学習を支援するシステム」の構築を目指した研究を進めています。
(3) 運動・動作解析
自転車ペダリングなどのスポーツ運動や、歩行動作や立ち上がり動作などの生体の動きに対して、動作自体の計測や筋電図などの計測を行って、生体力学的解析を行っています。
研究業績