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学部・大学院

薬理学

有史以来、我々の祖先はありとあらゆる植物・動物・鉱物が薬にならないか試し、経験的に体に特別な作用のあるものを見つけてきました。薬理学は、有効成分を精製することからはじまって、それがどのようにして作用するのかを明らかにし、分子構造を改変して薬を改良する、というふうに発展してきました。現在では大半の薬はその標的分子がわかっており、さらに特定の標的分子を狙って薬が開発される時代になっています。このような時代において医学部の薬理学講座に課せられた最重要課題は、生理的に、もしくは疾患において重要な働きをしている標的分子を見つけることだと私たちは考え、オリジナルな研究を行っています。

学部教育では、2学年の生体の構造と機能C2、P2dの講義・実習を担当しています。薬理学は基礎医学と臨床医学の橋渡しとなる学問であり、ここで学んだことは臨床の現場でしなければならない判断に直結します。すべての講義でコンパクトにまとめたレジュメを用意し、この広範囲でなおかつ日進月歩の学問を整理して理解できるよう、またモチベーションを維持して自主学習できるよう、手助けしていきます。

新たな薬物標的分子の同定を目指して

ドラッグデザインや抗体医薬が発達してきた現在、生体内の標的分子の機能を阻害あるいは促進する手段は増えつつあります。このような時代において医学部の薬理学講座に課せられた最重要課題は、生体において、もしくは疾患において重要な働きをしている標的分子を同定することだと考えています。この目的のためには、生化学・分子生物学的手法、細胞生物学的手法、遺伝子改変マウスの作成・解析など幅広い研究技術が必要です。私達はこれら最新の生命科学技術を駆使して新たな標的分子についてオリジナルな研究を行っています。私達のメインテーマは、細胞外マトリックスである弾性線維の形成機構と再生の研究です。肺気腫や動脈中膜硬化などの老化関連疾患の新しい標的分子の同定を目指しています。他にもスタッフは独自の研究テーマ(糖鎖の生体での機能、心臓の発生の分子機構)を持っており、それぞれの「おもろい研究」を展開しています。

現在の研究テーマ

生体の伸縮性を生み出す仕組み(弾性線維の形成と再生の分子機構)

身体の組織や器官は細胞だけで作り上げることはできず、細胞外マトリックスと呼ばれる細胞外の構造体があって初めて機能する組織を構築することができます。肺・動脈・皮膚などの伸縮する組織に多くあってその伸縮性を担っているのが弾性線維という細胞外マトリックスです。弾性線維はターンオーバーが極めて遅く、加齢とともに弾性線維が劣化・断裂することが肺気腫、動脈中膜硬化、皮膚のたるみの直接原因となります。弾性線維が再生できればこれらの老化関連疾患の新たな治療になり得ますが、そのためには弾性線維の形成機構を知る必要があります。ミクロフィブリルという線維にエラスチンタンパク質が沈着し、互いに架橋されることでゴムのような性質を帯びたものが弾性線維です。しかしこの反応はひとりでにおこるわけではありません。私達は、弾性線維組み立てのプロセスに必要なタンパク質を同定し、それぞれの機能を明らかにしてきました(Fibulin-4, 5, LTBP-2, 4など)。これらのタンパク質の中には、細胞培養において弾性線維再生作用を示すものもあり、今後の弾性線維再生療法開発において期待が持てます。

角膜細胞外マトリックス構築の分子機構

どのようにして細胞外構造体(=細胞外マトリックス)が構築されて細胞の足場として働き、またどのようにそれが維持されるのかは完全には明らかとなっていません。私達は眼の角膜組織をモデルとして、この透明な組織の構築に細胞外マトリックス、特にケラタン硫酸グリコサミノグリカンという直鎖状糖鎖がどのように関わっているのか、遺伝子改変マウスを使って研究しています。これまでにケラタン硫酸糖鎖が正常に合成できないと角膜が薄くなり、また角膜内に沈着物が生じる原因となることを明らかにしてきました。現在は発生過程におけるケラタン硫酸糖鎖の機能を調べると共に、糖鎖合成を調節することで角膜厚を変化させて近視の矯正ができないかという応用研究も進めています。この研究以外にも糖鎖構造解析のツールとして糖分解酵素のクローニングや糖鎖に対するモノクローナル抗体の作製なども行っており、基礎的解析からその応用まで幅広く研究を進めています。

心臓の形作り、および、心臓の成熟プロセスの分子機構

心臓は全身の血液を循環させるポンプとして機能し、生命を維持するのにもっとも重要な臓器です。そのため、発生期において心臓はもっとも早期に作られます。 最初は球状の構造物だったものから4部屋からなる心臓が出来上がる過程にはまだ謎が多くあります。私達は蛍光で発生初期の心臓を可視化できるマウスを作製し、ライブでこの形作りのプロセスを観察することにより、直接理解することを目標にしています。細胞がどこでどのように心筋細胞として運命を決定し、どの方向に分裂・移動し、心臓としての形を形成していくのかを明らかにします。また、心筋細胞は、生後しばらくして細胞周期の休止期に入り、以後、分裂・増殖することはありません。 そのため、ひとたび心筋梗塞が起きて細胞が壊死すると、再生することなく心機能障害・心不全に至ります。もし心筋細胞の増殖を誘導することが可能になれば、心筋梗塞・心不全といった心疾患に対する理想的な治療となるはずです。そこで、心筋細胞が生後どのようなプロセスを経て、細胞周期の休止期に入り成熟していくのかを理解し、シグナルを操作することにより心筋細胞の増殖を誘導する方法の開発を目指します。

がんと概日リズムの関連の解明

がんの新しい分子標的薬を開発するために、がんと概日リズムという新たな関連を題材とすることにより、これまでに無いがん制御機構の同定を目指しています。概日リズムに着目した理由として、(1)近年の大規模疫学研究でシフトワーク従事者(看護師、パイロット等)は、がん罹患率が有意に上昇することが報告されたこと(2)正常な概日リズムが保てないPeriod2欠損マウスは癌になりやすいこと(3)がん細胞では概日リズムが崩れていることが挙げられます。これらの報告から、がんと概日リズムの密接な関連が示唆されますが、その分子機構は不明な点が多く、未同定のがん制御機構が存在する可能性は非常に高いと考えられます。

これまでの研究で我々は、がん抑制遺伝子p53とPMLが概日リズムと分子レベルで密接にクロストークすることをすでに報告しています。今後もがん抑制遺伝子と概日リズムのさらなる関連を解明し、新規のがん制御機構を同定することを目指します。

連絡先

〒573-1010 枚方市新町二丁目5番1号
関西医科大学 薬理学講座
電話 教授室 072-804-2350
研究室 072-804-2367
FAX  072-804-2359

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医学部 薬理学講座
大学院医学研究科 医科学専攻 分子薬理学・細胞外マトリックス医学

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