研究力強化に関する方針・計画
関西医科大学の研究力強化に関する方針及び計画について
令和5年7月18日 学長裁定
〇 基本方針
関西医科大学は、建学の精神を踏まえ、優れた医療人の育成・輩出により社会貢献するとともに、独創力のある先端的な研究の推進と臨床現場への応用、社会的課題解決を見据えた産学官連携の促進を通じて、日本をリードし、世界に開かれた医療系総合大学となることを目指し、研究者個人及び組織的な研究力の強化を進展させる。
〇 具体的な計画
研究力強化にあたっては、優れた研究者の確保・育成、基本的な研究推進の方策、研究環境の向上が重要であることから、以下の対応を推進する。
1.研究人材育成
(博士人材の育成強化)
本学の将来を担う研究者養成として、大学院修士・博士課程進学者の拡大は重要な課題である。「研究医養成コース」の活用等により、優秀な医学部学生の大学院進学を積極的に奨励するとともに、進学者に対しては、外国語による論文作成支援やリサーチアシスタントへの採用、研究プロジェクトへの参画などにより、リサーチマインドを醸成し、実践的な研究人材の育成を推進する。 また、先端的な医療分野の展開において、医・工・情報連携、異分野融合が不可欠になっている情勢に鑑み、ノンメディカルの大学院修士課程の充実、外国人や社会人学生の受入れ等、大学院教育の多様化を促進させる。
(若手研究者の確保)
研究組織の活性化において、柔軟な発想で挑戦的に研究に取り組む若手研究者の確保は必要不可欠である。そのため、教員構成については、中長期的なバランスを考慮しつつ、原則として、40歳以下の若手教員が専任教員数の40%を下回らないようにする。また、テニュアトラック制度の適用等により、適任者に早い段階から独立した研究者として主体的に研究に従事できる魅力的な環境を提供することにより、優れた若手研究者の応募や登用を促進させる。 さらに、全学的に博士学位取得者を積極的に採用するとともに、未取得者に対しても、博士学位の取得を促すことにより、組織全体の研究力向上を図る。
(ポスドクへの支援)
若手研究者の確保、組織的な研究遂行において、博士課程修了者で、研究職を得る前段階の任期付き研究員として従事するポスドクは不可欠な存在であるが、研究に従事する上での身分が不安定であることから、できるだけ早い段階で正規の研究職が得られるよう、研究能力の向上とともにキャリアアップのための支援を行う。
(多様な研究人材の確保)
異なるバックグラウンドを有する研究者の着想・融合による研究活性化を図るため、外国人研究者の受入れやクロスアポイントメント制度を活用した実務家教員の採用など、多様な研究人材の確保を促進させる。 また、女性研究者の登用・育成を推進するために、原則として女性教員が専任教員数の30%を下回らないようするとともに、出産、育児、介護等のライフイベントにより研究を中断せざるを得なかった研究者には、円滑な復帰を支援する制度を通して、持続的に活躍できる体制を整備する。
2.研究推進方策
(研究IRの促進・活用)
研究資源の効果的・効率的な運用、持続的な強み・特色の形成、研究意欲の向上につなげるため、本学の研究力に関するデータ分析と学術動向や社会的背景、他の研究機関とのベンチマークを踏まえた研究IRを充実させ、学内での情報共有及び戦略形成への利活用を進める。
(研究連携の強化)
特色ある先端研究や異分野融合型研究の推進、産学連携研究の強化にあたっては、多様な組織・研究者の参画が重要になることから、学内の基礎系研究者と臨床系研究者との連携、部局横断的なチームビルディング、また、国内外の学術コミュニティ活動への積極的な参加等を通じた他大学研究者、海外研究者、産業界研究者等との研究ネットワークの形成を促進させる。
(国際化の推進)
我が国における研究力低下の要因として、外国人留学生や教員・研究者が少なく、国際的な頭脳循環から取り残されているという指摘も踏まえ、海外の大学・研究機関との組織的な連携強化、国際公募等による優秀な外国人研究人材のリクルーティングなど、研究の国際化を推進する。また、国際大学院プログラムにおける外国人留学生の確保、国際化推進センターによる支援の充実等により、多様な海外からの研究者と日本人研究者・学生が柔軟な発想により協働できる環境を構築する。
(外部資金の獲得促進による好循環の形成)
外部研究資金の獲得は、研究力の強化とともに、教員や組織の研究力評価にもつながる重要な課題である。そのため、研究実績が少ないことから外部資金の獲得が難しい若手研究者等の独創的な研究や大型の競争的資金獲得を目指す研究のスタートアップを支援するため、学内研究資金や間接経費による支援制度を拡充する。それにより、当該研究の成果を科学研究費補助金ほかの多様な外部資金の獲得につなげ、取得した間接経費等を更なる研究力の強化に向けた資源配分に生かすことにより、研究高度化の好循環サイクルを実現する。
(研究イノベーションの促進)
さらに、研究IRに基づく有望領域の研究、国内外の他機関と連携した学際・先端融合研究、若手研究者間の革新的・挑戦的な研究等を戦略的に推進する組織として、部局横断による「先導研究開発推進機構」(仮称)を設置する。所属教員には、研究エフォートを確保するほか、時限付き流動研究ユニットとして研究費等を支援し、厳格な評価に基づく選択と集中により、戦略部門、戦略研究所へ発展させ、将来の基幹的な研究領域として育成するプログラム等を設ける。その結果、多様な強み・特色が継続的に形成されるイノベーションエコシステムを機能させる。
(産学官・地域連携の推進)
医療分野の研究におけるトランスレーショナルリサーチ、早期的な社会実装の重要性に鑑み、研究シーズと医療ニーズ及び社会的課題とのマッチングに基づく多様な産学官連携活動の活性化、組織的な共同研究の大型化やグローバルな研究開発を促進させる。 また、地域との連携協力、社会貢献を積極的に推進する観点から、枚方市や大阪府等の自治体、経済団体や医療関係機関とのネットワークを活用した共創活動により、ウェルビーイングや産業振興等の課題解決、地域活性化への対応を強化する。
(研究成果の向上・普及)
研究力強化の指標となる論文生産性、論文引用数等の実績を向上させるため、査読付き論文の投稿、英文論文の作成に加え、国際共著論文、ハイインパクトジャーナルでの論文発表を奨励するとともに、必要な支援を行う。 また、研究成果について、オープンアクセスポリシーに基づいた公開、積極的な発信・広報、ステークホルダーへのアウトリーチ活動を展開し、社会への普及・還元の促進とともに、研究ブランド力の向上を図る。
3.研究環境整備
(支援人材の充実)
研究者が研究に専念できる環境の構築、組織的な研究力の向上、民間への技術移転の推進を図る体制として、調査・分析等の研究IR、研究戦略の企画立案、外部資金の獲得支援、契約締結や広報活動等を行うURAや教員の研究遂行を支える技術スタッフ等を充実させる。また、支援組織として、研究IRや戦略企画を行う教育研究企画室と社会実装を支援する産学知財統括室の連携を強化し、一体的に運営するため、研究イノベーション推進体制(「研究・イノベーション推進機構」(仮称)の設置等)を整備する。
(働き方改革、人事給与マネジメント向上)
教員の業務負担の軽減、研究時間の確保と合わせて、個人の特性に応じた能力を活かせるよう、業務の合理化・DX、ワークシェアリング等の働き方改革を促進するとともに、医療系大学の果たすべき役割(教育、研究、診療、社会貢献)を考慮した適材・適所の人員配置を進める。また、業績評価に基づく処遇改善(報酬への反映、上職への早期登用、研究環境の向上等)、研究遂行に対するインセンティブを強化する人事給与マネジメント改革を推進する。
(施設・設備の共用、共創の場の整備)
科学技術の発展に伴い、先端的な研究遂行に必要となる施設・設備の高度化が進み、これらを全て整備することは不可能な状況にある。そのため、綜合研究施設の機能強化により、学内研究設備の更なる共用とともに、他大学等と連携して、相互の施設・設備の利活用を促すことにより、効果的な研究の進展と新たな共同研究の展開等、協力関係の構築につなげる。 学内に国内外の研究機関や産業界からの研究者が集まり、施設、設備、データ等の研究資源を共用しつつ、様々な共同研究や連携業務に従事する場として「国際・産学連携推進センター」(仮称)を整備するとともに、本学が研究コミュニティをリードしてイノベーションを共創する共同利用・共同研究拠点の形成を進める。
(研究DX)
先端学術研究の展開において、デジタル技術との融合によるイノベーションや新領域形成が急速に進展している状況から、AI・データサイエンスとの連携、データビリティに対する環境整備とともに、研究成果の検証、研究公正の側面からも、研究データの一元管理等の組織的なデータマネジメント、データの収集・活用や設備の遠隔利用等の研究プロセスの自動化、バイオバンクによる試料等のデータベース化による共用促進など、研究DXを推進する。
以 上