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2019年06月10日
膵がん患者さんに治療への希望を届けるためのクラウドファンディング開始
腹膜転移の膵がん患者さんに、余命宣告ではなく治療の希望を。新しい治療法への挑戦。
「膵がん」の5年生存率は、わずか7%前後——
初期症状に乏しい「膵がん」は早期発見が極めて難しく、発見されたときには手遅れ、余命宣告…というケースが多々見られます。また、病院で膵がんと診断される約8割の患者さんは、もはや手術が不可能なほどがんが転移し、進行しているといわれています。中でも腹膜に転移した「腹膜転移膵がん」の患者さんは治療を行うことさえ難しく、早々に治療を切り上げる施設もあるのです。
本学外科学講座里井壯平診療教授らの研究チームは、そうした腹膜転移膵がんの患者さんやそのご家族に、『余命宣告ではなく治療の希望を』届けるため、新たな治療法の開発に乗り出しました。そして生まれた治療法はすでに33名の患者さんに臨床試験として実施され、8名の患者さんは腹膜への転移が消失して手術ができるまでに回復。研究成果は世界的な医学専門誌にも掲載されるなど、一見順調に見えました。
突然止まった治療法開発の歩み
しかし、この新たな治療法で用いるお薬は現在、膵がんには保険適用外です。そのため、臨床試験か先進医療としてしか実施できないのが現状です。様々な公的研究費の獲得、製薬企業からの支援など、一刻も早い実用化に向けて里井診療教授らの研究チームは努力を重ねましたが芳しい成果は得られず…。明らかに良好な成果を見せていたこの治療法は、歩みを止めざるを得ませんでした。
クラウドファンディングという、第三の選択肢
そこで注目したのがクラウドファンディング。広く社会から寄附を集め、その資金で臨床試験(医師主導治験)を実施する。そして成果を検証し、まとめ、一日でも早く保健収載を実現することで、一人でも多くの腹膜転移膵がん患者さんを救うことができるかも知れない。里井診療教授はそう考え、公的研究費でも企業の支援でもない、本学でも初めてとなる新たな資金調達に挑戦することを決断しました。
クラウドファンディングとは…
クラウドファンディングとは、群衆を意味する「Crowd」と資金調達を意味する「Funding」が合体した造語で、インターネット上で広く資金調達を行う手法です。定められた期間内に目標金額が集まった場合、寄せられた寄附金を活用することができるのが特徴。逆に、期間内で目標金額に満たなかった場合は、全額が寄附者に返金されます。新製品開発などものづくり領域では十数年前から活用が進んでいましたが、医療・医学分野では近年になって利用例が増えてきました。
また、「投資型」「融資型」「報酬型」などのタイプに分かれ、今回本学が取り組む「報酬型」クラウドファンディングは確定申告の際、「寄附金控除」か「寄附金特別控除」のどちらかを選択することが可能です。
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