修了生メッセージ(博士前期課程 高度実践看護師コース)
老年看護学領域
現職:大阪府 ソフィアメディ株式会社 訪問看護ステーション堺中央 勤務(老人看護専門看護師)
志賀 桂子 さん
現在のご職業をお聞かせください。
大学院博士前期課程修了後、ソフィアメディ株式会社に入職、ソフィアメディ訪問看護ステーション堺中央の開設メンバーとして勤務を開始しました。入職1年後に管理者に着任し、現在、ステーションの分室である分室堺北も含めた管理者業務も行っています。
ステーションのメンバーで連携しながら、利用者さんへの毎日の訪問に加え、24時間365日対応し、夜間の緊急訪問なども行っています。
訪問看護の介入が開始となる方は、点滴や胃ろう、褥瘡などの医療的ケアや慢性疾患の体調モニタリングやセルフケア支援が必要な方、がん末期、高齢者などの入院に伴う機能の低下により、入院前と同様の生活を送ることが困難な方などです。それらの方に、地域の多施設・多職種と連携し支援を行っています。また、住み慣れた家での看取りも積極的に行っており、ご本人やご家族の「生きるを看る」毎日です。
修了年に老人看護専門看護師の資格を取得しました。専門看護師の活動として地域の病院やケアマネジャーさんとディスカッションする機会をいただいたり、病院やケアマネジャーさん対象の研修会などで高齢者看護についてお話しさせていただいたりすることもあります。社内では、まずは所属先の関西のステーションで高齢者看護についての勉強会を開催し、今後は所属先の全国のステーションからのコンサルテーションを受けたいと考えています。
関西医科大学大学院看護学研究科に進学した理由を教えてください。
関西医科大学大学院看護学研究科の理念、アドミッションポリシーに共感し進学を決めました。私は2期生ということもあり、入学前には大学院としての方針やこれまでの先輩方の取組みが見えない部分も多々ありました。しかし、著名な先生方が多数在籍されていたこと、高齢者について学びたい、そのなかでも取り組んでいきたいと考える「看取り」について研究されている教授がいらっしゃったこと、教授と面談した際に、この教授の下で学びたいと感じたことが理由です。
関西医科大学大学院での学びや研究が、現在の業務に役立っていることはありますか?
博士前期課程の2年間は、常に自分と向き合う苦しく厳しい日々でした。しかし、「そこで何が起こっているのか、それは一体どういうことなのか」をすべてにおいて考え続け、物事の本質を捉えようとすることの大切さなど、かけがえのない学びを得ました。また、自分の思考や体験した事象を言語化すること、自分の言葉で語ることの重要性も学びました。
先生方や同期とディスカッションし、文献などから新たな知見を獲得するなかで、これまでの実践を振り返ることを繰り返し、物事を俯瞰的に捉える力が養われたと感じています。このような力は、現在看護を行う上で、また管理者業務を行う上で、大変役立っており、大学院入学前の自分との大きな違いを感じています。
私は「急性期病棟で非がん患者を看取った高齢配偶者の入院中の体験」というテーマで研究し、ご遺族にインタビューを行いました。病院勤務時代では知ることが困難であったご遺族の体験の捉え方から、高齢者の捉え方の特徴、具体的にどのような点に配慮し看護を行うことが良いかを知ることができ、現在在宅で暮らす高齢者への看護を行う上でも活かすことができています。また、時代背景、これまでの社会情勢を踏まえ、何が明らかになっているのかを確かめ、自分のリサーチクエスチョンを明確にしていく作業は、自分をさらけ出し見つめ直し、論理的に物事を考えるという力が養われたと感じています。
在学中に印象に残っている講義科目は何ですか?
「老年高度看護学演習Ⅰ」の中で「老衰」について学びを深めたことは大変印象に残っています。これまで疾患に特化した知識や技術を磨いてきましたが、「老衰」について学ぶことは初めてでした。老衰における解剖整理学的特徴、医療者や家族の老衰の捉え方、文化や歴史を学ぶことで、経過と看護の結び付け方や診断のポイントにおいては急性期の看護でも活用できることを知り、死と看護について深く考える一助となりました。
また、「看護倫理」では、倫理的状況をどうのように解きほぐしていくのか、院生それぞれが経験事例を発表し、その内容を踏まえ学びました。私は「命の尊厳と治療の公平性、高齢者のエイジズム」について発表し、ディスカッションしました。そのなかで、年齢制限のある治療は何かという視点を持つことで、治療の公平性を高齢者に限って考え、そこが自分にとってのこだわりになっていたことに気づきました。高齢者の治療の差し控えが話題となることが多いなか、希望する治療を受けることができる公平性についても目を向けたことで、事柄には背中合わせとなる部分があることを学びました。これは自身の思考の傾向を知ることにもなり、大変印象に残っています。担当教員からの言葉に、看護師としての太く強い芯を感じ、看護師が人の命を守ることはもちろん、人の安寧を守る職であることの本当の意味を学びました。
実際に入学してみて、本学の魅力だと感じた点をお聞かせください。
著名な先生方の貴重な講義を受けることができたことは大変魅力的でした。在籍期間がちょうどコロナ禍と重なり、登校できない期間も長かったのですが、オンライン対応など、手厚くフォローしていただきました。
また、博士前期課程の院生は全員同じ部屋で過ごすので、分野や学年を超えて交流があり、活発なディスカッションができたことは魅力的でした。
受験生の方に向けて、一言メッセージをお願いします!
高度実践看護師コースは、自分と向き合う時間を過ごします。実習と研究の両立は大変ですが、労働するという立場から少し離れて、自分の思考と実践を整理するには貴重な時間です。
また、志高く学ぼうとしている同期に囲まれ、一生の仲間にも出会うことになると思います。専門看護師を目指して、このコースに進むには覚悟も必要だとは思いますが、思い切って飛び込んでください。ひとりの人として、看護師として、大きく成長することができると思います。この大学院で過ごした2年間は、人生の宝物だと思っています。