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学部・大学院

外科学

 関西医科大学外科学講座のホームページをご覧いただきましてありがとうございます。

 関西医科大学外科学講座は、主任教授の下に6名の診療教授を配置し、肝臓外科、胆膵外科、消化管外科、上部消化管外科、小児外科、乳腺外科において最先端の外科診療・教育・研究を進めています。また約300名の同門会員が関西を中心に幅広く活躍しています。

 各グループの特色を簡単にご紹介します。肝臓外科、胆膵外科では、多くの肝胆膵外科高度技能指導医および高度技能専門医が在籍しており、解剖の複雑さから高度な技術が要求される肝胆膵領域の外科治療に対して、万全の体制で安全な手術を提供しております。消化管外科では、食道癌、胃癌、大腸癌に対して豊富な手術実績を持ち、癌の根治を目指しつつも患者さんの負担を軽減し術後障害を最小とする外科治療を心がけています。また他施設では諦める様な高度進行癌に対しても最新の知識と技術をもって治癒への道を探ります。さらには高度肥満や糖尿病に対する外科治療など、先進技術の開発にも取り組んでいます。小児外科では、低侵襲内視鏡外科および難易度の高い新生児手術を得意としており、近年その手術症例数は急速に増加傾向にあります。乳腺外科では、常に科学的根拠に基づいた治療を実践し、多職種と連携しながら患者さん・ご家族に寄り添った安全で安心な乳がん診療を提供し、先進医療や多施設共同臨床試験を通して次世代型医療の開発にも積極的に取り組んでいます。この様な教室の高い診療・技術レベルが評価され、国内外から多くの見学・研修希望者を集めています。

 研究では、癌に対するウイルス治療などの基礎研究から新しい手術技術の開発といった臨床研究まで多くのテーマに取り組み、その成果を世界に発信しています。2021年度には66編の英論文を発出しています。

 そして、これからの外科学を担う若い医師の育成に全力で取り組んでいます。豊富な症例と充実した指導体制を基に確実な手術手技や最新の医療を指導することは勿論ですが、それと同時に、患者さんや社会から親しまれ尊敬される暖かい人間性を持った外科医を育てることを目標としております。

 診療・教育・研究に教室員一同全力で取り組んで参りますので、ご指導ご支援のほど何卒よろしくお願い申し上げます。

関西医科大学外科学講座 主任教授 関本貢嗣

 

現在の研究テーマ

乳がん免疫微小環境の解析

 がん細胞は、自身の免疫原性を変化させることやがん微小環境において免疫寛容を誘導することで、生存・増殖しています。乳がんは免疫原性のある腫瘍であり、腫瘍免疫を活性化することによって、免疫系によるがん細胞の排除を誘導できる可能性があります。私たちは、乳がん微小環境における免疫応答の動態を明らかにし、これを効率的に活性化する治療法の開発に取り組んでいます。

遺伝性乳がん診療プログラムの確立

 全がんの5-10%が、遺伝に伴って発症するといわれ、とくに、BRCA1 およびBRCA2という2種類の遺伝子に変異のある場合には高率に乳がんや卵巣がんが発症することが知られています。この遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC: HereditaryBreast and Ovarian Cancer Syndrome)の患者さんおよびその家族に対しては遺伝カウンセリングを通して、希望者にはこの遺伝子検査を行い、変異陽性患者に対しては適切な治療やその家族に対してサーベイランスを行う必要があります。本学附属病院はBRCA遺伝子検査機関であり、BRCA1/2変異陽性者に有用とされるMRI検診や、リスク低減卵管卵巣摘出術(riskreducing salpingo-oophorectomy:RRSO)やリスク低減乳房切除術(risk reducing mastectomy: RRM)など本疾患に対する一連の診療プログラムの確立に取り組んでいます。

排便機能障害に対する仙骨神経刺激療法の作用機序の解明

 現在本邦では約500万人の便失禁患者がいると推測されています。2017年に「慢性便秘症の診療ガイドライン」が発刊され仙骨神経刺激療法が重要な治療法として記載されました。この治療法の特徴は症状が改善するかどうかを一時的な刺激装置で約2週間刺激し、治療開始前に試すことができる点にあります。効果が認められたときのみ永久的な刺激装置を腰背部の皮下に植え込みます。実際には刺激用のリードが仙骨孔からS3の近傍に植え込まれます。手術の効果については約70%以上の患者さんに症状の改善がみられ、欧米では約40%に症状の完全消失が認められています。本邦においては2014年にこの治療法が保険収載されるまでに本学を含めた5施設において治験が行われ、欧米と同様の効果を認めています。しかし、治療効果の明らかなエビデンスがあるにもかかわらず、その作用機序については殆ど解明されていません。今後私たちは肛門内圧の上昇、直腸肛門感覚の改善、大腸の蠕動への影響などを仮説として研究を進めていく予定です。

局所進行直腸癌に対する周術期化学療法の有効性および安全性の検討

 総合医療センター大腸グループが大腸癌治療のなかでも特にこだわりを持っているのが、下部進行直腸癌に対する集学的治療です。下部直腸癌は他部位の大腸癌に比べ、局所再発、全身遠隔転移(特に肺転移)再発が多いのが特徴ですので、診断がつき次第、術前化学療法を導入することにより、直腸原発巣のみならず微細な遠隔転移制御が早期に達成され、長期治療成績(予後)の向上がもたらされると考えています。治療スケジュールは、術前に3か月全身化学療法を施行し、その後腹腔鏡下直腸手術(全直腸間膜切除および両側側方リンパ節郭清術)を施行。そして術後再度3か月化学療法を行います。現在、術前化学療法の安全性や有効性を証明するため、臨床研究を企画し、遂行中です(総合医療センター自主研究:局所進行大腸癌に対する周術期化学療法に関する有効性および安全性の検討~第II相臨床試験~UMIN000024323))。

胆膵領域の先進的取り組み

 増加の一途をたどる胆膵疾患の手術件数は全国においても有数の施設であり、2004年度より術後合併症低減・標準化・高難度手術教育プログラムを導入し、一定の業績をあげてきました。さらに難治癌である胆膵癌に対して集学的治療を導入し、その患者数は年々増加。成績も改善しており、高難度手術を積極的に施行するとともに低侵襲手術の導入を行っています。消化器内科・化学療法科・放射線科・緩和ケア科と連携し、薬剤部・栄養管理部・感染管理部と協力関係を構築し、安心・安全で効率的な医療を展開しています。現在、学会主導プロジェクト研究、膵癌診療ガイドライン作成、JCOG肝胆膵グループの一員として手術や胆膵癌治療に関する数多くの臨床試験を遂行しています。特に膵癌腹膜転移治療が2017年度に先進医療に承認され、臨床試験責任施設として本邦30施設との多施設共同試験を行っています。European Pancreas Club、米国、韓国、台湾、中国の膵臓グループと国際的臨床試験の実施や協力関係を構築し、活動範囲を世界的に拡大しています。今後数多くの胆膵領域のエビデンスが創成されることが期待されます。

安全確実で低侵襲な肝臓手術手技と術後ペインフリーを中心とした包括的周術期管理

 肝臓外科は全国2位に肝切除件数を誇り、約7割を腹腔鏡手術で実施しています。腹腔鏡手術の拡大視効果により、繊細で確実な手術手技が可能であり、安全で確実な治療が実現されていますが、さらなる治療成績の向上と安全性の確立に向けて各術式の定型化を目指した臨床研究に取り組んでいます。術中出血量の低減のためラジオ波エネルギーデバイスの開発、術後胆汁漏抑止のためのICG蛍光法を用いた検出法を開発している他、医工連携によるComputer Assisted Surgery( CAS)システムを用いた手術シミュレーションシステム、高速度ステレオビジョンシステムによる肝切除ナビゲーションシステムの開発を行っています。更に関西肝臓外科育成の会を立ち上げ、高度技能専門医の育成を行っています。

肝臓外科における包括的周術期管理

 肝臓外科では科学的に検証された周術期管理方法を集学的に実施する術後回復強化(Enhanced Recovery After Surgery : ERAS)プロトコールを導入しその有効性を報告しています。また術後ペインフリーへの一環として知覚痛覚定量分析装置による客観的な痛み評価法を用い、術後予防的NSAIDs投与の定量化された除痛効果を確認。術後のサルコペニア予防の取り組みとして肝がん手術症例に対する運動療法を導入し、併設の健康科学センターにて専属トレーナーによる個別運動プログラムを周術期に行い、術後も継続できるよう指導しています。近年、高齢者の肝切除も増加傾向にあるため、年齢だけでなく総合機能評価でスクリーニングを行い、高齢者においても安全な肝切除に取り組んでいます。

切除不能進行肝細胞癌、切除不能胆道癌に対する取り組み

 切除不能肝細胞癌に対しては、分子標的薬を積極的に導入し、肝動注化学療法との併用療法の安全性と有効性を報告している(臨床試験)。2020年からは免疫チェックポイント阻害薬と分子標的薬の併用療法を開始しており、多くの切除不能肝細胞癌を有する患者さんで腫瘍の縮小と長期生存の実現が可能となりつつあります。さらなる治療効果の改善を目指し、多くの多施設共同臨床研究に参加しています。
 切除不能胆道癌(肝門部胆管癌、肝内胆管癌、胆嚢癌)に対しては、GCS療法を中心とした化学療法を実施しており、現在、約3割の患者さんで腫瘍が縮小し、根治切除(コンバージョン手術)が可能となっています。我々は、薬物療法と外科手術を組み合わせた集学治療による予後改善を目指しており、治療効果の向上を目指した多くの臨床研究を実施しています。

直腸腫瘍に対する腹腔鏡下低位前方切除術後の経肛門ドレーン留置と水溶性造影剤注腸検査による縫合不全の予防及び治療に関する前向き第I相試験

 本研究により直腸低位前方切除術が一時的人工肛門(DS)無く安全に管理可能となり、縫合不全検出画像診断法が確立されました。最終的にDSを要する症例は23.9%→7.0%まで減少し閉鎖率は100%です。現在は一般診療として様々な応用をしています。Int J Colorectal Dis. 2020 Nov;35(11):2055-2064.

中下部直腸癌摘出標本を用いた、MRI画像診断と病理所見の比較試験(CAMPaS RC Trial)

 本研究は大腸癌研究会project研究として発展しました。直腸癌の術前MRI診断精度を改善させ、術前化学放射線療法による治療後の効果判定の精度を改善させ、括約筋温存術の可能性を広げ、手術不要の症例 をwatch and waitとして判定する基礎研究になると期待されています。根治目的で術前化学放射線療法後に進行中下部直腸癌に対して切除を施行した46例では、観察期間中央値1345日 (129-2656). 再発7例 (肝/肺/尿管/皮膚;4/5/1/1). 骨盤内再発なし. 5年全生存率 84.7%. 5年 無再発生存率 80.5% (pStageIII以下の症例では83.3%)です。

腹会陰式直腸切断術、周辺臓器合併切除を要する術式研究

 根治と機能温存を両立させるため、trans anal TMEや、伏臥位会陰アプローチなどを柔軟に組み合わせた応用術式を報告しています。(臨床外科75巻5号 552-560,2020. Colorectal Dis. 2021 Jun;23(6):1579-1583)

蛍光尿管catheter(NIRC)を用いたimage navigation surgery

 尿道に近接する進行直腸癌根治術、再発骨盤内腫瘍に対する安全な機能温存術と拡大手術の可能性について検討し報告しています。(Dis Colon Rectum. 2021 in press, Dis Colon Rectum. 2021 Mar 1;64(3): e54.)

切除不能進行再発食道癌に対する免疫化学療法および免疫併用療法の効果予測バイオマーカー探索研究

 切除不能進行再発食道癌に対する免疫療法と化学療法の併用療法(FP+Nivolmab or Pembrolizmab)および免疫併用療法Ipilimumab+Nivolmabが保険収載され、これらの患者さんに対する治療戦略が大きく変わることとなりました。一方で、これら免疫療法の治療効果や有害事象の発生は予測できない状態であり、適正な治療法の選択ができていないのが現状である。そこで、多施設共同でのこれら複合免疫療法の治療効果・有害事象の予測マーカー探索の前向きコホート試験を行っております。
 今後、食道癌治療における主軸となる可能性が高い治療法であり、効果予測が可能になれば食道癌治療戦略において大きな進歩になります。

食道癌術前化学療法時の新規支持療法の開発

 切除可能な進行食道癌における標準治療は術前化学療法+外科手術とされています。術前に化学療法を加えることにより、全身に潜んでいる癌細胞をいち早く消失させることが可能となり、治療成績は大きく向上しました。一方で、化学療法による有害事象から身体機能の低下を起こす患者さんが多く、その場合には手術治療の合併症や術後の予後にも悪影響を及ぼすとの報告がなされるようになり、術前の化学療法中の栄養運動療法をはじめとする支持療法の重要性がますます重要になってきております。そこで、リハビリテーション学部との共同研究で化学療法中の新規支持療法の開発を行っております。現在多施設共同の前向きランダム化比較試験の計画しております。

CRP遺伝子多型と食道癌リンパ節転移に関する多施設共同後ろ向き観察研究

 食道癌は早期の段階からリンパ節転移を起こしやすく、悪性度の高い癌とされています。しかし、食道癌のリンパ節転移には患者さん自身の生体反応によって大きな個人差があることが分かってきました。この個人差(遺伝子多型)による食道癌リンパ節転移診断を行う研究を行っております。現在、秋田大学医学部付属病院を中心として、国立研究開発法人日本医療研究開発機構より委託を受け、全国の食道癌の主要施設とともに観察研究を行っております。当院もその主要施設として参加しております。
今後、食道癌における新たな手術術式の開発や手術を回避できる患者さんの選別などにつながる大規模な試験になります。

高度進行食道癌に対する集学的治療法の開発

 食道癌は気管や大動脈といった重要臓器に浸潤を認めることが多く、切除不能として緩和的治療を行われ、日本の多くの施設では「手術はできないので、根治は諦めてください。」と言われてしまうことが多いのが現状です。こういった高度に進行した食道癌に対して、近年有効性が示されてきている化学療法(DCF療法1, 2, 3)や化学放射線療法を組み合わせることで手術が可能になることが多くなってきました。現在、これら化学療法や化学放射線療法の有効性を検討した臨床試験(T4食道癌に対する導入DCF療法vs FP-RT療法:JRCTs051180164)を行っております4。
また、これら集学的治療を行った後も癌が気管や大血管への浸潤が消えていない場合にでも、手術で大血管や気管を合併切除することで根治できる場合もあります。当院では積極的にこのような患者さんに対して根治を目指した手術を行ってきております5, 6
1: Yamasaki M, et al. Oncology 2011
2: Yamasaki M, et al. Annals of Oncology 2017
3: Sugimura K, Yamasaki M, et al. Annals of Gastroenterological Surgery 2020
4: Sugimura K, Yamasaki M, et al. Annals of Surgery 2021
5: Yamasaki M, et al. Disease of Esophagus 2020
6: Yamasaki M, et al. Esophagus 2021

胃癌診療の質と治療成績の向上を目的とした多施設共同臨床研究

 胃癌患者さんに元気な体に戻っていただくために、胃癌診療の質と治療成績の向上を目指しています。そのために薬物療法と外科手術を組み合わせた集学的治療の開発や術後後遺症に対する治療方法の開発を多施設共同臨床研究で行っています。また、手術できないほど進行した胃癌患者さんや再発した胃癌患者さんに対しても、免疫チェックポイント阻害薬などの新規化学療法薬剤の開発を関西医科大学附属病院がんセンターと一緒に多国籍多施設共同臨床研究で行っています。

肥満・糖尿病に対する減量・代謝改善手術の開発

 食生活の欧米化や社会的ストレスの増加に伴い日本でも肥満割合は増加傾向にあります。そして、肥満による糖尿病も増加傾向です。日本ではあまり知られていませんが、肥満や糖尿病に対する手術があります。腹腔鏡下スリーブ状胃切除やスリーブバイパス術などの減量・代謝改善手術です。関西医科大学附属病院は日本肥満症治療学会の肥満症外科手術認定施設になっており、安全かつ効果的な減量・代謝改善手術を実施するとともに、多施設共同研究でより有効な減量・代謝改善手術を開発するための研究を行っています。

手術シミュレーション方法の開発

 関西医科大学には医科大学でもトップクラスの345㎡という広い空間に、100種類以上の機器を保有するシミュレーションセンターがあります。腹腔鏡手術などの高度な技術を必要とする手術のトレーニングを行うとともに、より効果的なシミュレーション・トレーニング方法の開発も行っています。また、医学生に実際に近い手術手技を体験してもらうことで、スーパードクターと呼ばれるような外科医を目指す医学生が増えることも期待しています。

先天性疾患に対する新たな治療の開発

小児外科グループは
1.iPS細胞利用横紋筋シートを用いた先天性横隔膜ヘルニアに対する再生医療の確立
2.マウスヒルシュスプルング病モデルを用いた分子学的な病態解明の探求
3.トリ臍帯ヘルニアモデルを用いた分子学的な病態解明の探求
に取り組んでいます。

連絡先

〒573-1010 枚方市新町二丁目5番1号
関西医科大学 外科学講座
電話 教授室 072-804-2759
   医局  072-804-2574
FAX  医局  072-804-2578

関連

医学部 外科学講座
大学院医学研究科 医科学専攻 外科学、肝臓外科学、胆膵外科学、乳腺外科学

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