呼吸器外科学
1956年に関西医科大学に胸部心臓血管外科講座が開設され、60年間にわたって心臓血管外科と呼吸器外科の領域について診療・教育・研究を行ってきたが、呼吸器外科領域で対応すべき肺がんなどの増加に対応し、2016年5月から呼吸器外科学講座が開設された。また2006年以降、附属病院(旧附属枚方病院)のみで呼吸器外科診療科を行ってきたが、2016年5月から総合医療センター(旧附属滝井病院)でも呼吸器外科診療科を開設し、より多くの地域医療に貢献できる体制となった。
呼吸器外科では、現在年間450例前後の呼吸器外科手術を行っており、原発性肺癌を中心に悪性縦隔腫瘍、転移性肺腫瘍、自然気胸などを主な対象として手術治療を行っている。原発性肺癌は,地域医師会と協力し市民検診による早期発見例が増加しており,治療成績は年を追って向上している.当院は、肺癌診断に関してPET-CTなど優れた医療機器が装備されており、気管支鏡検査は呼吸器内科と合同で検査・interventionを行っている。2015年より完全胸腔鏡下手術を導入した。早期肺癌に対しては胸腔鏡による低侵襲手術を行い、進行肺癌では呼吸器内科、放射線科と協力し、抗癌剤治療・分子標的治療・免疫チェックポイント阻害薬および放射線治療を加えた集学的治療を積極的に行い予後の改善に努めている。2021年の手術総数は616例(附属病院488例、総合医療センター128例)で、このうち、呼吸器外科手術の中心をなす原発性肺癌手術例は324例(附属病院259例、総合医療センター65例)であった。
北河内の呼吸器外科治療に貢献する
呼吸器外科学講座は2016年に胸部心臓血管外科学講座から分離・独立する形で新設された外科系講座です。肺癌、気胸など嚢胞性肺疾患、転移性肺腫瘍、縦隔腫瘍など、心臓・食道以外の胸部疾患に対する外科治療が呼吸器外科学講座の診療・研究の対象となります。原発性肺癌と周囲の癌間質の相互応答が転移促進状態(=前転移ニッチ)の形成にどのように関与しているか、胸腺癌の発症メカニズムにはどのような因子が関与しているのか、などについて分子病態の研究を開始しています。また、治療方針の決定に関する意思決定調査などを通じて患者さんの意思決定支援に活かす臨床研究、腫瘍疾患における臨床上の疑問についての臨床研究、多施設共同臨床研究への参加も開始しました。臨床研究については国内外での学会発表を既に開始しており、今後基礎的研究とともに論文で世界へ成果を発信していきます。
現在の研究テーマ
現在の研究テーマ
肺がんにおけるPD-L1発現と予後および抗PD-1抗体治療薬の効果予測に関する研究
肺癌前転移ニッチ関連バイオマーカーの特定と先制医療への展開に関する研究
呼吸器外科における意思決定調査
胸腺上皮性腫瘍発症メカニズムに関する探索的研究
左肺上葉切除術後の左上肺静脈断端の評価
研究業績